家入レオ 「TIME」

lostwatch

2018年11月04日 14:48


峻烈なデビュー作の1st「LEO」以来、ずっと思い悩み、彷徨い、苛立ち、焦って、迷って、濃い霧の中をふらついていた、と思われる家入レオさんですが、このアルバムでようやく晴れ渡る音を鳴らしてくれた。

あまりに晴れがましい一枚。












「WE」が全編痛みが走っていたアルバムで聞いているのがつらかったのが、これは笑えるぐらいに突き抜けている。

アルバムというよりは、みんなで楽しく楽曲作って並べてみました、という底抜けの無邪気さがあり、聴いていて気持ちいい。




















家入レオはどれを聞くべきか、と問われたら、現時点では迷うことなく「TIME」を推す。

1stじゃないのか、っていうのもあるけど、1stは凄い、けどそれを聞いた時点で行き止まりで、その次はない。
1stに魅了されて、「何故次がないのか」、「作れないのか」という問いを発すると、この人が憎くなってきてしまう。














作れないのか?




まぁ、おそらくそうなのだろう。

ただ、枯渇したというよりは、そういう状況にない、と理解している(理解することにしている)

作家としての切実な表現欲がいまの家入レオさんにはないのだろう。

















この晴れやかなアルバムにしても、家入レオさんの次の音楽性は見えない。

作家性が見事なまでに揮発してしまっていて、何でも歌える、誰にでもなれる魔術のようなボーカルが跳躍して見事な音を鳴らしている。


まぁ、それでもいい。


そういう季節、と思うことにしてます。













にしても、手練れのバンド編成で聞かせる楽曲が結構ある。
「ファンタジー」の乾いたドラムが素晴らしくいい。

ボーカルにしても、「ずっと、ふたりで」の音律に乗せられた感情の分厚さには、ほんとびっくりする。
こんな気迫のボーカル、ほかのだれがこの水準で歌をうたうことができるだろうか、ほんとすさまじい気合の一曲。

「祈りのメロディー」や「ありきたりですが」に宿る歌の力がすごすぎる。

好きなだけでしょ、と言われてしまえばそれまでですが、いま現役で歌っている中では、日本最高のボーカリストであると思う。
















付属のDVDに収められたZepp東京でのライブを見ると、レイドバック歌謡曲がブームなのか、有線マイクで山口百恵や中森明菜(振り付けあり!)を披露し、もはや武道館で見せてくれた「純情」とか「Hello To The World」とかの暴れ音楽からは興味が移ってしまった模様。

っていうか、この延長線上には加藤登紀子ぐらいしかいないけどいいのか?(笑)














ほんとこの人は変わっていく。


終盤で盛り上げようとしてやった「純情」には、もはや魂が入っているように思えなかった。
「20」のDVDでみた「Bless you」のように、なにかがもう失われていて次を求めて動いてしまっている。

2月の大阪城ホールのライブはオーケストラを従えるそうなので、歌謡曲の歌姫路線でしばらく行くのでしょう。

















でも、まぁ、わたくしは、次の家入レオさんの、次の音が鳴らされるのをずっと待ってます。

1stの再現ではない、家入レオさんが再び作家になって表現するアルバムを待ってます。











学生の時以来に、イヤフォンでこのアルバム聴いてます。
有楽町線でイヤフォンして涙ぐんでいるオッサンがいたら、結構な確率でわたくしと思われますが、そっとしておいてください(笑)








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